日本で大量に発生する廃棄食糧を活用し、新興国や途上国の貧困層に食を提供する。事業家たちが挑む、社会問題の両面の解決を目指す、新たなボランティアと社会事業の取り組みを聴く
《 企業紹介 》
一般社団法人コネクトライフエイド
代表理事 田中 章寿、理事 石山 寛、理事 松本 尚典
理事三者対談
日本には、大量な廃棄食糧が発生している。飲食事業における食品ロスは、経費のロスとなって、一般消費者の飲食価格に転嫁されている。そして更に、そのロスは、ゴミと化し、環境問題に深刻な影響を与えている。
一方、今日の食糧がえられず、餓死をする途上国の子供たちは、いまだ、世界に放置されている。世界の異常気象に起因する大災害は、貧困層の生活に大打撃を与える。
この日本における廃棄される食品を、有効な形で、世界の食糧が必要な人たちに提供し、先進国の食糧廃棄や環境問題と、途上国の貧困問題を、同時に解決する方法はないか?
日本で、企業を経営する3名の経営者が、それぞれの事業の活動の中で、この課題を提起し、力をあわせて、そのための仕組みを作ろうという相談をした。そこから、一般社団法人コネクトライフエイドは誕生した。
この活動に賛同し、社会問題解決に取り組む企業や、学生の有志諸君たち、そして、各国のボランティア団体の有志が、その活動に集い始めている。
ボランティア活動からスタートし、この活動は、いま、何を行い、どこを目指そうとしているのか?
社団法人を設立した3名の理事の対談から、それを取材する。
■理事三者対談
■司会
株式会社URVテクノインテリジェンス
マーケティング支援事業デビジョン デビジョンヘッド
花川 愛梨
代表理事 田中 章寿、理事 石山 寛、理事 松本 尚典
理事三者対談
花川:本日は、一般社団法人コネクトライフエイドの、川崎にある事務所にお伺いしています。
一般社団法人コネクトライフエイドは、建設会社である株式会社フォーワードの田中社長・石山取締役と、海外進出支援コンサルティング会社・総合商社事業を傘下に持つURVグローバルグループの松本最高経営責任者の3名の経営者の皆さんが、共同ではじめられたボランティア事業体ですね。
まず、設立に至った経緯を教えていただけますか?
東京都帰宅困難者対策条例と、その課題
田中理事長:株式会社フォーワードは、オフィスの内装工事や、オフィス関連商品の販売の事業を行っている企業です。
この事業の一環として、株式会社フォーワードは、防災備蓄用品の販売を行って参りました。
防災備蓄用品の柱は、何といっても、防災用食品です。
例えば、東京都では、東京都帰宅困難者対策条例が施行され、水や食糧について、社員の3日分の社内備蓄が義務付けられました。
フォーワードも、多くの企業様から、この条例に適合する食糧のご提供をご用命いただいております。
しかし、一方、食糧というものは、その他の防災用品と異なり、賞味期限があります。従って、それが有効に機能するためには、その賞味期限前に、これを入れ替えなければなりませんが、この食糧の引き取り先が、ほとんど無いというのが現状です。
例えば、賞味期限4年という食糧を、その期限切れの1年前で、東京のすべての企業が入れ替えたとします。そうしますと、東京都の働く人の3日分の食糧が、3年ごとに、完全に廃棄されてしまうわけです。
単純計算で、1年に、東京都の全サラリーマンの1日分の食糧が廃棄されることになりますから、これは膨大ですよね。
これは、あまりにもったいなのではないか?
法律で、備蓄が義務付けられたけど、その反対に、発生する大量な廃棄を、政治や行政は、考えていないではないか?
そういう疑問を、私が持ち、弊社の取締役の石山と話し合ったわけです。
石山理事:田中理事と私の共通の想いとして、何とか、これを社会に役立つような方法で、有効に利用できないか、ということになり、それでは、世界の困っている子供たちに、これを提供できたらいいよね、という話になったわけです。
田中理事:この話を、株式会社フォーワードの経営顧問をお願いしていた、松本尚典先生にご相談したわけです。
松本先生は、世界各国でのビジネス経験も豊富で、企業の海外進出や視察旅行の企画、それに貿易商社としての事業もおこなっていらっしゃる会社を、世界各国にいくつも経営されておられます。
その松本先生が、私たちの、「その想いを、形にしましょう」ということで、具体的な組織として設立をされたのが、一般社団法人コネクトライフエイドです。
備蓄食糧が、「貧困層の子供でも食べないようなモノ」でいいのか?
松本理事:私のほうから、もう一つ。付け加えてお話しますね。
株式会社フォーワードは、備蓄食糧を販売されておられます。一方、私が、その事業の外からの目で、冷静に拝見していますと、企業の総務の皆さんは、この備蓄食糧を、「ちゃんと本気で考えて、導入されているの?」と疑うような、購買をされているように感じました。
例えば、
「法律で義務づけられたから、仕方ない。一番安い、カンパンの缶詰でもいれておくか?」
といった感じに。
本当に激甚災害が発生した場合、社員全員が、3日間、会社に籠城して、その食糧を食べながら、仕事をするんですよ。御社の社員さん、3日間、カンパンで、大丈夫なんですか、と、思うわけです。
ボランティア団体の方と話をすると、こう言われるんです。
「会社の備蓄食糧なんて、貧困地域の子供に持って行っても、食べませんよ(笑)」って。
予算的に一番安いものをテキトーに入れておけ、という感覚で、本当に激甚災害時に対応できるのですか?
貧困地域の子供たちが喜ばないようなものをいれて、あなたもそれを3日間、食べられるのですか? ということです。
「法律で強制されているから」「どうせ、廃棄をするから」ではないはずです。自分たちの災害時に命を繋ぎ、かつ、使用しなければならないというリアル感がないんです。仮に幸いにも使用しない場合でも、世界の子供たちが、喜んでくれるような食糧を、きちんと、企業は導入すべきではないでしょうか?と、私は思うのです。
つまり、これは日本企業で働く人たちのためにもなる啓蒙活動の要素もあります。
花川:それはそうですよね。私もカンパンは、3日間、とても食べられません。
確かに重要な視点ですね。
活動の実績
花川:さて、具体的な活動の実績についてお聞きします。
おそらく理事の皆さんは、経営者として、別の組織を経営されておられるので、この活動には、無報酬で参加されているのですよね?
田中代表:そうです。全員、無報酬で、持ち出しをしています。
花川:これまで、どのような活動の実績を作られているのでしょうか?
田中理事:コンクトライフエイドは、まだスタートしたばかりです。
今は、第一回の提供活動を完了したところです。
日本のボランティアの組織と協力して、フィリピンのセブ島のスラム地域への提供を行わせていただきました。
松本理事:フィリピンのセブを例にして、日本人の読者の皆さんに、私から新興国のリゾート開発の裏側に関する、お話をしましょう。
日本人は、
「フィリピンのセブ? リゾートで、潤っている地域でしょ?」
と、感じるかもしれません。
もし、あなたがそう感じるとしたら、あなたの感覚は、非常に「世界の情勢を知らない、日本人の独りよがりの感覚」だと思ったほうがよいでしょう。
確かに、日本の地方自治体の場合、リゾート開発が大企業によって行われ、外国人観光客が来れば、地元のすべての産業が潤い、雇用が創出されます。しかし、これは、日本人に教育が行き届き、しかも、地方における民主主義行政が行きわたっている、日本という先進国の結果です。
つまり、日本が、正しい西側先進国だから、こうなるんです。
新興国というのは、そうなっていません。
リゾート開発が進めば、そこで潤うのは、一部の産業を独占する企業だけです。雇用も、そのような企業のサービスに適した教育を受けている、一部の労働者によって占められてしまいます。
そして、リゾート観光客が押し寄せ、地元の物価を上昇させ、強いインフレが発生します。
リゾート開発の恩恵を受けることができない貧困層は、その打撃をモロに受けます。
私たちが、美しい海と、快適なリゾートを求めて新興国にいくことは、その裏側で、そこについてこられない貧困層の、更なる貧困を増幅させる活動に、他なりません。
貧困により教育が行きわたらず、民主主義が適正に機能していないということは、こういうことになるのです。
フィリピンのセブ島は、そのような地域の代表例です。つまり、セブの貧困を創り出している責任の一端は、セブをリゾートとして愛する、日本人にもあると、私は思います。
コネクトライフエイドが、最初に、セブに着目したのは、このような理由です。
石山理事:モノゴトには、多面的な側面があるということですね。その多面的な面を見ずに、外部の訪問者として、綺麗な一面だけを見ていては、国際的な視野に立つことはできない、ということですね。
私も、よい勉強をしました。
ボランティアと、社会事業
花川:さて、次に、ボランティアの継続性という論点についての、お考えをお聞かせください。
皆さま、経営者でいらっしゃり、現実的に組織をマネジメントしておられる立場におられますから、ボランティアという活動が、宗教組織などの資金のパトロンがいない限り、継続性に欠ける、ということは、十分、認識されておられると思います。
現実に、ボランティア団体の中には、資金的な調達手段が乏しく、寄付金を集めても、組織の運営費に充当してしまっているような団体も存在します。
コネクトライフエイドでは、この点、活動資金問題や、今後の社会事業への脱却などの点を、どのように戦略をたてておられますか?
田中代表:そうですね。
理想的な話だけをしていても、経費が出なくなってしまえば、絵にかいた餅になってしまいます。
まず、コネクトライフエイドの場合、その最大の経費は、食糧を海外に輸出し、それを保管し、貧困地域への提供を行う費用の捻出です。
まず、第一次的には、食糧のご提供企業様に、廃棄費用分をご提供いただくご提案を行います。実際、企業が備蓄食料の廃棄をするには、それなりの費用がかかっています。それを、食糧とともに、ご提供いただくわけです。
これですべて賄えるわけではありません。
従って、この活動のPRも含め、チャリティコンサートの開催のようなエンターテイメント事業、そして、クラウドファウンディング事業も実施していきます。これは、単なる集金のためではなく、一般の方への協力とご理解のPRでもあります。
石山理事:更に、途上国のボランティア活動の現場に、私たちが通い、その人たちのお話を聞くことで、私どもの、BOP事業につなげることもできるかもしれません。
BOP層は、将来の、ミドル階層の予備軍と言われ、膨大な数の世界の人が属する階層です。ここに向けた、ビジネスを、参加する経営者が、それぞれの観点から考えていくことも、この活動を永続させるためには、重要だと思います。
花川:ボランティアをトリガーとした、社会事業の立ち上げ、ということですね。
松本理事:更に、もっと、面白いことも起きています。
コネクトライフエイドの活動に参加する若者は、非常に、優秀な日本人の学生層です。
彼らは、単なるボランティア活動として活動に参加しているのではありません。
ボランティアを通して、世界のボランティア活動家と人脈をつくり、各国のBOPの現場の中の課題を探すために、活動をしています。
日本で、ゲームにかじりついているような大学生とは、全く異質の、高いポテンシャルがある層です。この若者たちの活力に、私は、非常に期待をしています。彼らが、優れた途上国におけるビジネスモデルの「画」をかけるなら、私は、そこに投資をしたいと考えています。
つまり、ボランティアは、最高のポテンシャルのある若手と、私たち経営者・事業投資家の出会いの場となっています。
花川:なるほど。経営者が、ボランティアに参加するということは、非常に高度な戦略と結合するということですね。
とても、深みのあるお話をお聴きしました。
本日は、ありがとうございました。
【インタビューを終えて】
温かい支援のこころを、経営者としての冷徹な戦略で包んだ活動
株式会社URVテクノインテリジェンス
マーケティング支援事業デビジョン デビジョンヘッド
花川 愛梨
3名の経営者が、力をあわせて、創業した、一般社団法人コネクトライフエイド。
3人の個性は、まさに、今の国際性のキーワードでもある、ダイバーシティ(多様性)だ。
田中代表理事は、非常に優しい、お人柄が、表情にも溢れるようなタイプ。淡々と事業を語る中にも、途上国の貧しい子供たちを助けたいという、純粋に温かい心が、インタビューに零れだしていた。
石山理事は、3人の中で、最も年功を積まれた苦労人タイプの経営者。調整に優れた、おそらくは、顧客をファンに変えてしまうような、真綿で包み込む営業を長年積んだ、ベテランの魅力を醸し出す。
一方、松本理事は、外資系の金融コンサルを出身し、多角事業を展開する。理性的な計算に基づく戦略家タイプの、事業投資家であり、経営者だ。
このような3人が、それぞれの考えを活かしあいながら、紡ぎだしたボランティア事業モデルが、コネクトライフエイドだ。
そのハーモニーが、事業のモデルに活かされている。
ボランティアという活動は、言うは易いが、その継続が本当に難しい。実際、多くの寄付者が抱く、ボランティアに対する「うさんくささ」は、「本当に、集まったカネやモノが、すべて活かされているのか?」という疑問だ。
寄付者に、その会計がディスクローズされることは、まずない。
一方、コネクトライフエイドは、食糧を提供した企業のモノと、カネが、どこの支援に使用されたのか、誰が支援に協力してくれたのか、すべてを、ホームページで公開するという。企業経営に必須な、透明性・公開性を、ボランティアでも、貫徹するという。
経営者たちが創った、ボランティアらしい。
コネクトライフエイドが、理事の個性のハーモニーを活かしながら、継続性のあるボランティア、そしてその先にある社会事業に、取り組んでほしいと願う。
COMPANY INFORMATION
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サイト企画制作&SEO支援・コンテンツマーケティング・ブランディング開発支援・商品パッケージデザイン 総合プロジェクト
日本で廃棄される余剰食糧を、食糧が欠乏している途上国の貧しい人達に届けたい。このように考えた事業家である有志達により設立をされた、非営利型の一般社団法人。
Googleの非営利団体向け助成金である、Google Adgrantsの認定も受けました。現在は、企業が災害用に備蓄する食糧を廃棄せずにご提供をいただき、フィリピン・カンボジアなどの子供たちへ、無償提供する活動を続けています。